明光義塾が生徒10万人超え、先行投資で利益減でも強気なわけ

明光義塾が生徒10万人超え、先行投資で利益減でも強気なわけ

ニュースの概要

個別指導塾「明光義塾」を展開する明光ネットワークジャパンで、生徒数が10万人を超えるところまで回復した。同社は2027年8月期の業績について、売上高270億円、営業利益17億円を見込み、前期からの増収増益を計画している。売上高の予想は従来計画より引き上げた。ただし営業利益の予想は20億円から17億円へ下方修正している。理由は、採用の強化、日本語学校の増床、広告などマーケティングへの先行投資である。会社は今後1年間、利益の積み増しより将来に向けた投資を優先する姿勢を示している。生徒数の回復という明るい材料と、利益を抑える判断が同時に出た決算といえる。

引用元: 明光義塾の生徒数が10万人超に回復、今期は増収増益を見込む(Toyo Keizai Online)

分析・見解

売上は上方、利益は下方という数字の読み方

今回の発表で目を引くのは、売上高予想を引き上げながら営業利益予想を3億円引き下げた点である。一見すると矛盾して見える。だが、これは需要が強いから攻めの出費を増やす、という典型的な形だ。営業利益17億円は売上高270億円に対して約6.3%で、利益率は決して高くない。ただ、前期より増益という計画は崩していない。守りに入らず、成長の種まきに回したと読むのが自然である。

生徒数が10万人を超えた意味も大きい。個別指導塾は、教室数を増やさなくても、既存教室の席が埋まるほど利益が出やすい。固定費である家賃と講師の枠を、より多くの生徒で分け合えるからだ。回復局面では、この効果が利益を押し上げる。それでもあえて投資に回すのは、回復が一時的でないと見ているからだろう。

採用強化が先行投資の中心になる理由

個別指導塾の品質は、講師と教室長で決まる。生徒が増えれば、同じ数の講師では時間割が組めず、希望の曜日に通えない生徒が出る。そこで取りこぼしを防ぐため、採用に先に費用をかける。講師は大学生アルバイトが中心になりやすく、毎年入れ替わる。このため採用は一度やれば終わりではなく、毎年かかる固定的なコストになる。

人手不足の時代には、時給の引き上げや募集広告の増額も避けにくい。採用費の増加は利益を削るが、ここをケチると生徒の満足度が下がり、退塾につながる。塾業界では「採用は売上の先行指標」と言える。今回の利益予想の引き下げは、その現実を数字で示したものである。

日本語学校の増床が示す、新しい収益の柱

注目したいのは、日本語学校の増床が投資項目に入っていることだ。少子化で国内の小中高生は減っていく。そのため、塾単体の成長には天井がある。一方、日本で学ぶ外国人は増えており、日本語教育の需要は伸びている。

生徒の年齢層も通う目的も違う事業を持てば、少子化の影響を和らげられる。大手学習塾が介護人材の教育や留学支援に広げてきたのと同じ発想である。ただし、日本語学校は在留資格や入国管理の制度変更に左右される。需要は強くても、国の政策次第で急に振れる。ここは新しい柱であると同時に、読みにくい変動要因でもある。

回復を支えた要因と、持続性への疑問

生徒数が戻った背景には、対面指導への回帰や、受験への関心の高まりがあるとみられる。ただし、共働き世帯が増え、学校外の学びにお金をかけられる家庭と、そうでない家庭の差は広がっている。月謝の高い個別指導は、景気や物価の影響を受けやすい。

また、オンライン塾やAI学習アプリは、価格の面でもっと安い選択肢を出している。回復が続くかどうかは、教室に通う価値を、どれだけ具体的に示せるかにかかる。単に先生が隣に座るだけでは差別化にならない。学習の進み具合を保護者に見せる仕組みや、定期テストごとの成績の変化といった証拠を出せるかが、今後1年の勝負になる。

ビジネスへの影響

塾を選ぶ保護者が確認したい三つの点

塾の生徒数が増えている時期は、教室が混み、講師の質にばらつきが出やすい。体験授業では、教室長が面談で目標を具体的に聞くか、講師の入れ替わりへの対応方針があるかを確かめたい。月謝だけでなく、季節講習や教材費を含めた年間の総額を出してもらうことも大切である。比較の軸は、料金表より、成績が上がるまでの伴走の仕組みにある。

教育事業の経営者が学べる投資のタイミング

今回の判断は、需要が戻った最初の1年に、利益を削ってでも供給力を整えるという教科書的な動きである。需要が戻ってから採用を始めても、育成に数か月かかるため遅れる。中小の塾や教室も、問い合わせが増えた時点で講師の確保に動くべきだ。

同時に、収益の柱を一つに頼らない点も参考になる。塾が生徒の学年やコースだけに依存すると、少子化で縮む。社会人向け講座や外国人向け教育など、近い分野で試す余地はある。ただし、新分野は小さく始め、数字を見て広げたい。

数字を読むときの落とし穴

営業利益の下方修正という見出しだけで、経営不振と判断するのは早い。大切なのは、減益の理由が、先行投資か、既存事業の悪化かである。今回は前者である。投資が実を結ぶかは、次の決算で生徒数と利益率が同時に伸びるかで検証できる。投資家も取引先も、売上の伸びと費用の増え方を並べて見るとよい。

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