ニュースの概要
学習塾大手の京進が、2027年5月期の中間決算を発表した。売上高は前年同期より6.0%増え、純利益は黒字へ転換している。集団指導の「TOPΣ」と個別指導の「スクール・ワン」で、新年度の入会者が順調に伸びたことが大きい。中学生が高校生になるときも通い続けてもらう施策が効いたという。一方で、採算の合わない校舎を閉めたため、拠点数は減った。それでも残った校舎の生徒数が大きく増え、学習塾部門の売上高は前年同期を上回った。保育・介護事業の安定も、全体の業績を支える要素になっている。数字だけを見ると地味な決算に映るが、中身には塾業界の変化が表れている。
引用元: 学習塾大手の京進、上期売上高が6.0%増、純利益は黒字転換(Logmi Finance)
分析・見解
校舎が減っても売上が伸びた理由を数字から読む
学習塾の成長は、長く「校舎を増やせば生徒も増える」という前提で語られてきた。京進の今回の決算は、その逆を示している。拠点数は減ったのに、学習塾部門の売上は前年同期を上回った。つまり、1校舎あたりの生徒数と収益が上がったということだ。
塾の費用は、家賃や講師の人件費といった固定費(=生徒数に関係なく毎月かかる費用)が大きな割合を占める。生徒が少ない校舎を閉め、残した校舎で生徒を増やせば、同じ費用でより多くの売上が作れる。純利益の黒字転換は、この仕組みがうまく働いた結果と見るのが自然だろう。
中学から高校へつなぐ施策が持つ意味
見逃せないのは、中学生から高校生への継続施策が業績に寄与した点だ。塾業界では、高校受験が終わった時点で退塾する生徒が多い。せっかく育てた生徒が、そこでいったん離れてしまう。これは大きな機会損失である。
新しい生徒を集めるには、チラシやネット広告、体験授業の運営に費用がかかる。すでに通っている生徒に続けてもらう方が、1人あたりの獲得費用は低い。しかも高校生は授業料の単価が上がりやすく、通う期間も長くなりやすい。継続率の改善は、売上と利益の両方に効く、地味で確かな手段だ。
集団と個別、二つの看板が生む安定感
京進は、集団指導の「TOPΣ」と個別指導の「スクール・ワン」という、性格の違う二つの看板を持つ。集団指導は1人の講師が多くの生徒を教えられるため、利益を出しやすい。個別指導は費用が高めだが、苦手克服や学校の補習まで幅広い要望に応えられる。
学年が上がり、生徒の目標や学力が変わっても、別の形で通い続けられる選択肢があれば、他社へ流れる可能性は下がる。継続施策の土台には、こうした商品の幅があると考えられる。ただし、これは決算の数字から読み取れる推測であり、実際の移行率までは公表資料を見て確かめる必要がある。
保育・介護の安定と、まだ見えない部分
保育・介護事業が安定していることは、少子化や景気の影響を受けやすい学習塾事業の振れを和らげる。収益源が一本足でないことは、不採算校舎を整理する決断をしやすくした面もあるだろう。
一方で、今回の発表だけでは分からない点もある。既存校舎の生徒数の増加が、一時的な入会の波なのか、地域内でのシェア拡大なのかは判断できない。講師の確保も大きな課題だ。生徒が増えた校舎で授業の質を保てるかどうかが、次の決算で問われる。
ビジネスへの影響
校舎別の三つの数字を見直す
塾や習い事など、拠点を持つ教育事業の経営者は、総生徒数や校舎数だけで成否を判断しない方がよい。まず校舎ごとの生徒数と損益を確認する。次に、学年が上がるときの継続率を見る。最後に、生徒1人あたりの月額売上を比べる。この三つを校舎別に並べると、閉めるべき拠点と、てこ入れで伸ばせる拠点が分かれてくる。
閉校は最後の手段である。その前に、近隣校舎との統合や、授業枠の組み替えを試す余地がある。閉める場合も、通っている生徒への振替案内を丁寧に行わないと、他社への流出につながる。
保護者が塾を選ぶときの確認点
保護者にとっても、この決算は塾選びのヒントになる。校舎の生徒数だけでなく、中学から高校まで続けて通える体制があるかを確認したい。学年が上がるときのコース案内が具体的かどうかも、続けやすさを左右する。費用は学年や指導形式で変わるため、年間の総額で見積もりを取ると比べやすい。
また、校舎の統廃合は珍しいことではない。通っている塾が閉まる場合の振替先や、通塾距離の変化についても、入会前に聞いておくと安心だ。
次の決算で注目したい点
投資家や業界関係者は、次の決算で継続率、校舎あたりの売上、講師の確保状況を見たい。増収が続き、人件費が膨らみすぎていなければ、今回の黒字転換は一時的なものではないと判断しやすい。